製麺機で作った麺と、手打ちの麺は、何が違うのか。
「やっぱり手打ちのほうが美味しい」と言う人がいる。しかし、なぜ手打ちの麺はコシがあるのか、その理由を説明できる人は少ない。
コシは、偶然生まれるものではない。製法の中に、コシを生み出す仕組みがある。
そもそも「コシ」はどこから来るのか
コシの正体は、グルテンの網目構造だ。
小麦粉に水を加えてこねると、グルテンというタンパク質が形成される。このグルテンが網目状に絡み合うほど、麺は弾力を持ち、コシが生まれる。
つまり、コシのある麺を作るためには、グルテンの網目構造をいかに強く・均一に形成できるかが鍵になる。
手打ちが生むコシの理由
手打ちうどんの工程を見ると、すべての作業がグルテンの形成に向けて設計されていることがわかる。
足踏み
生地を足で踏み込む。土踏まず・つま先・かかとが生み出す凹凸のある圧力が、生地のたて・よこ・ななめに力を加える。一方向だけでなく、多方向から加圧することでグルテンが縦横無尽に絡み合い、強い網目構造が生まれる。
菊もみ(団子作り)
寝かした生地を再度手でこねる。緩んだグルテンを再活性化させ、より緻密な網目状組織を構築する。
のし(延ばし)
麺棒で縦横に方向を変えながら少しずつ延ばしていく。一気に薄くするのではなく、段階的に延ばすことでグルテンの組織を破壊しない。
包丁切り(引き切り)
刃をスライドさせて引いて切る。押し切りと違い、グルテンの組織を圧迫せずに切断するため、麺の角が立ち、食感が鋭くなる。
これらの工程すべてに意味がある。手打ちのコシは、偶然ではなく必然の産物だ。
一般的なロール式製麺機との違い
市場に流通している製麺機の多くは「ロール式」だ。
ロール式は、生地をローラーで均一に伸ばして麺線に仕上げる。短時間で大量に作れる反面、グルテンへの働きかけが一方向に限られる。足踏みのような「多方向からの加圧」がないため、グルテンの網目構造が手打ちほど強くならない。
これが「ロール式で作った麺はコシが出にくい」と言われる理由だ。
さぬき麺機が解いた問い
では、機械で手打ちのコシは再現できないのか。
さぬき麺機は1910年の創業以来、この問いに挑み続けてきた。
波ロール(荒延ばし)
表面に凹凸のある波型ロールが、生地に「もみ」と「ひねり」の効果を与える。たて・よこ・ななめと方向性を変えながら加圧することで、足踏みと同等のグルテン活性化を実現した。
樹脂製ロール(仕上げ延ばし)
金属ロールと違い、樹脂は適度なすべりを持つ。これが讃岐独自の「すかし打ち」——麺棒を斜めに動かしながら延ばす技法——と同じ作用を生み出す。
包丁引き切り方式
他社が採用する押し切りではなく、刃をスライドさせる引き切りを機械で再現。超多加水麺にも対応し、角が立った麺線に仕上がる。
スーパーニーダー(超低速ミキサー)
グルテン組織を破壊しない超低速回転で練り上げる。圧力のかかる部分と逃げを作る独自の羽根機構で、手ごねの原理をそのままに再現する。
コシを「数値」でコントロールする
さぬき麺機の最大の特徴は、コシを数値でコントロールできることだ。
加水率・圧延回数・鍛えの強さを設定することで、うどん・多加水ラーメン・そばそれぞれに最適なコシを安定して再現できる。職人の経験と勘に頼っていたものが、再現可能なデータになった。
手打ちのコシは、感覚ではなく、構造だ。
その構造を機械で再現し、数値で管理できるようにしたのが、さぬき麺機115年間の技術開発の答えだ。
手打ちと機械打ちの差は、「人の手か機械か」ではない。グルテンへの働きかけ方の差だ。さぬき麺機の手打ち式製麺機は、その働きかけを忠実に機械で再現することで、職人がいなくても本物のコシを生み出す。